某 廃 墟 病 院


新聞である廃墟の病院が荒されていて、自殺と思われる死体が見つかった事を知った。
今年になってから急にミステリースポットとして、
大勢の若者達が悪さをして、ガラスを割ったり、落書きをしたりと
うるさくて近所の住民から苦情が出ているらしいです。

新聞には、病院の写真が掲載されていました・・・
私は、あまり行く気がなかったのに助手が、
行こうとうるさく言ってたのです。

でも、死体が見つかったばかりで、こうして新聞に掲載された後では、
警察も警備をきつくするだろうし、もっと冷やかしが増えるだろうから、
どうせ行っても入れないよ・・・と言い訳をしました。
それに明るいうちは人目につくし、夜は久しぶりに友達に会いに
行くんだから駄目だよ・・・と今回は、あきらめるよう言い聞かせました。

友達の家に行く約束の時間は、夜6時頃でしたが
急用が入り留守番電話にするのも忘れて出かけました。
友達にも遅れる電話も後回しにしていました。

用事が済み一度家に帰ってから、助手運転の車で急いで友達の家へと向かいました。
走り出してから数分後に、友達に遅れる電話を入れる事にしました。
時計は、既に7時近くになっていたと思います。
すると友達が電話に出るなり

「もう家、出ちゃった? もっと早い時間から電話してたんだけど、
 留守電にもならないし、連絡つかなくて・・・
 今日キャンセルしちゃ駄目?
 どうも具合悪くて・・・・・」

しようがないので私は、また今度にしようと電話を切ると
なんと助手が・・・・
あの病院の新聞の切り抜きを、持って来ているじゃないですか・・・
会うはずだった友達には、心霊体験談を聞きに行くはずだったので、
何かの時にと、カメラを持って来ていました。

・・・・・・・

行き先変更! と助手・・・・車の向きを変えました。

なんでよぉぉぉぉ・・・・・
やっぱり行くのかぁ・・・

あまり気乗りしないまま、現場に連れて行かれる事になりました。

そろそろこの辺なんだけどなぁ・・・・  と助手

病院 私は数分走ったところで、左側から強く意識を感じて、ぱっと見ると・・・・
あっ・・・ あそこだ・・・ 
あったよ! あそこ!

その感じは、怨念とか悪念と違う・・・
《恐い》という思いの念でした。
その念が私を呼んでる・・・・

見た目が恐いわけではありません。
とりあえず車で周り巡りながら、駐車できる場所を探しました。
車を止め歩いて門へと近づくと、誰もいる気配がなく、閑散としていて
敷地内にも簡単に入れました。

私は、懐中電灯もつけずに、その意識の方へ進みました。

ここだ!
彼が呼んでた。
暗い病棟と病棟の間の狭い地面・・・
雑草や枯れ木が手前を邪魔していましたが、踏み分けてそこへ真っ直ぐ・・・・
目が暗闇に慣れてくるとそこには、花束がそっと供えてあるのが見えました。
花束
やっぱりここだよ。ほら。

手を合わせ、供養の真言を唱えて、その場を離れようとしたら、引っ張られて

「待って!」

「行かないで・・・  違うんだよぉ・・・」

彼は、落ちる時の恐さと、助けてという気持ちを伝えてきました。
自分がすでに死んでいる事は、理解していました。

新聞には、自殺と思われると書いてあったけど、
どうもそれが違うと言いたいようで・・・
間違えだったらしいのです。

でも、もう自分は死んでしまい、ここにこうしているのが、
嫌だから助けて欲しい・・・・ と

でもまだ無理なんだからと私は、そこを離れようとすると
グイッと引っ張るので、仕方がないので、手を合わせインを組み
違う真言を唱えて、彼を落ちつかせ、もう少し待つように言いました。
とにかく49日は、たたないと駄目だからね。

するとやっと引っ張るのをやめてくれました。

それから私達は、病院内へと・・・

その荒されようったら、凄いものでしたよ。
窓は片っ端から割られ、消火器を撒き散らし・・・
消火ホースも引っぱり出されて、避難用シューターまでも外に出されている・・・
壁には血が垂れているように・・ 多分ケチャップでしょう。
本当に酷い状態でした。悪いガキ共がいるようで・・・

病院内 しかし、病院内は、そんなに霊気もなく建物自体新しいと思われ綺麗でした。
「上が病室だな」と、とりあえず二階まで行く事にして、階段を上りました。

ありました・・・・ 手術室です。
でも大した氣は、感じません。
元々外科のない病院だったらしく、大手術は、行われていなかったのでしょう。
どうせこれ以上、上に行っても病室ばかりで同じだろうから、
下に向おうとしたら、数ヶ所にある階段を・・・
よりにもよって、同じ階段を誰がが上がって来るじゃないですか!
それにビックリして私達は、動きを止めてじっと黙っていました。

ガシャーンと何かを蹴ったりして、どんどん私達に近づいてくるので
慌てて行く気のなかった上の階まで上がってしまいました。
最上階までは上がらなかったけど、その階も状態は同じで、荒らされ放題・・・・
駄目だよねぇ・・・  あんな事しては・・・

その階の廊下を歩いてると・・・・
これは、本物でしょう。
血まみれのタオルが落ちていました。
その血は、まだ新しく、侵入者がガラスかなにかでケガをしたのか?
荒れた無人の病院で見るには、とても気持ちの悪い物です。

静かになってから私達は、また下へと・・・・
霊安室も探したんだけど、見つかりませんでした。
この病院には、ないのかな?

疲れたし、お腹も減ったので帰る事にしました。

左肩のすぐ後ろに気配を感じながら・・・・
途中のファミリーレストランに寄り、私達は対面して座りました。
食事が済み一服している時・・・・
彼(病院にいた霊)の話が出たので、

「実はさぁ〜あの人私について来てるんだよぉ・・・ (-_-;)

「うん。言おうと思ってたんだけど・・・・
 車の中でも思ったんだけど・・  やっぱり?
 何で自分の家族の所とか、行かないのかな?」

「今はまだ行けないし、私ならついて来られるし・・・
 やっぱり心配みたい。
 淋しいらしい。
 助けてくれるのが、私だと思ってるし・・・・」

それから、さっきからずっと気になっていた事がある。
助手の肩から、ふわふわ出てる霊気。
ずっと出てる・・・・
帰る途中に、顔色が悪く眠くて仕方ない、と言ってた助手も
その霊気が薄くなるにつれて眠気が取れてきたぞっ! と
顔色も良くなってきた。

悪い者では、なさそうだけど結構浮遊霊を食らってたらしい・・・
それが本人は無意識で、外へ出せるようになったらしい。
本人もわからないうちに、少しずつ能力を使えるようになってるのでしょう。
私の側にいると、良いトレーニングになるからね。

今は、まだ存在するあの廃墟病院は、誰が言い出したのか知らないけど
ミステリースポットと言うには、物足りないでしょう。
でも沢山の人が行って、恐怖の念を残して行ったら・・・・
その念のせいで、本当に悪い場所になってしまうし、
ガラスだのイロイロな物が落ちていて危険なので、
行かないようお願いしたいです。
荒すのもやめて欲しいです。
建物が悲しみます・・・・

その結果が彼です・・・・
心ない冷やかし、いたずらに巻き来まれたのか・・・
自業自得なのか・・・
罰を受けたのか・・・・

彼もあそには、いたくないと言っています。
彼自体は、そんなに悪い事をしていないようです。
でも、わりと気の弱い普通の人。

こうしてキーを打ってる私の左後ろに、今も不安そうに立っています・・・・

当分こうして彼は、私の側から離れないでいるのでしょうか・・・
ちゃんと成仏出来るのかが、相当心配らしいです。
仕方ないですねぇ・・・・
時が来たら成仏させてあげましょう。
結城 瞳



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