アパート


結城 瞳

だいぶ前の事なんですけど、まだ私が10代の頃、
練馬区のあるアパートの一階に住んでいました。
そこは、鉄筋コンクリート二階建てで、正面に二階へ上がる階段がありました。
私の部屋は、102号室。
隣の角部屋が良かったんですけど、
「まだクリーニングしてないから、綺麗にしたら移っていいわよ」
と大家さん。
「それならそうします」
と私は、待つことにしたのですが・・・
それから偶然同じアパートの一階に、一つ飛びで先輩が104号室と106号室に
住んでる事にしばらくして気が付きました。

106号室の先輩の話は、後で・・・

そのアパートは、鉄筋なのに窓や扉が木なんです。
だから、きしむ音なんかは、当然あるんですけど・・・・
それとは違う。明らかに違う音・・・
よく私は、昼寝をしていると必ず金縛りになり、起き上がろうにも
すごい圧力で押さえられて動けません。
目だけは、なんとか開けられる状態。
そうしてると、玄関の戸が「きぃ〜っ」と開いて、
かなり眩しい光がその向こうから・・
部屋にある四角いテーブルを囲むように、ぞろぞろと透明で、
たまに光の加減で、その姿がキラッと光る感じの人のような者が、
勝手に座るんです。
すごく狭い部屋(四畳半一間)でしたから、私はテープルの下に 半身潜り込んでいる状態で上向き全く動けません。
彼らは、ごちゃこぢゃと聞き取れない声でなにやら話し込んでました。
私の存在は、無視されていました・・・・・

それがどのくらいの時間だったか、わかりません・・・・
5〜6人いましたねぇ・・

しばらくすると「すぅ〜・・」と立ちあがり、ぞろぞろとまたドアから
出て行くのです。
そうすると私の体もすぅ〜っと楽になり動けるようになるのです。
とっても不思議な感じでした。
それが・・・・・ 毎日なんです!
そのアパートに住んでる間は、毎日私が昼寝をしないと来ないのですけど・・・
何故か眠くて睡魔に勝てませんでした。


起きている時に、風もたいしてないのに部屋の窓が

ガタガタガタガタ・・・・

夜中に、寝ようと電気を消して布団に入って少しすると

コツコツコツコツ・・・・・

アパートの階段は鉄製で上り下りの音が、正面の私の部屋からよく聞こえるのよ。
おまけにドアの上には、小さな窓。
だから階段を通る人影が見えます。

コツコツコツコツコツ・・・

あぁいうのって、つい数えちゃうじゃないですかぁ・・・

  コツ・・・
          1
  コツ・・・
          2
  コツ・・・
          3
  コツ・・・
          4
  コツ・・・
          5
  コツ・・・
          6
  コツ・・・
          7
  コツ・・・
          8
  コツ・・・
          9
  コツ・・・
         10
  コツ・・・
         11
  コツ・・・
         12
  コツ・・・
          ん???

あら・・・?  私の数え間違いかなぁ?? まぁいいや・・

その日は、寝ました。
しかし・・・また数日後・・・・・

コツコツコツコツ・・・・

あっ! まただぁ・・・・

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13・・・・

13?!

人影も見えました。
急いで外へ・・・・・
階段を数えたんです。何度数えても12段。
何で12なのぉ・・・??
階段を自分が利用する時も、「数えてはいけない」と聞いてました・・・・けど
そう言われるとつい・・・  怖いけど数えてしまうぅ・・・

そんな日が何度もありました。
音は13段・・・・ 実際は12段・・・・


なんだかんだ時が流れて・・・
「101号室は、いつ掃除してくれるのかなぁ・・??」
と思いつつ・・・
いつになってもクリーニングした様子がないのです。

そうしているうちにある夜。
101号室の方の壁から、なにやら声が・・・・
オンボロアパートだから隣の音なんて、まる聞こえなんですよ。

「おやおや?? 大家さん、私に黙って別の人を入れたかぁ?」
と思いつつ・・・・ 次の日、また深夜になると101号室から声が・・・
壁に耳を押し当てて聞いたんだけど、確かに男女二人の声・・・・
でも、言葉が聞き取れない。
昼間の者達の声と同じで、

ごにょごにょ・・・  もごもごもご・・・・・・

ずーーーーーーーうっと途切れなく話しているのです。
私は、次の日101号室の様子を見に行きました。
カギがかかっていて、ドアの天窓も壊れててはずれて傾いたまま。
階段からなら覗けるので、覗いてみました。
その時は、チラッとしか見えませんでした。
畳も変えた様子もなく・・・・

またその夜、同じように声が・・・

「あー。これは、ガキどもが夜中寒いから空き部屋に潜り込んでるんだなぁ」
って思いました・・・・

でもよく考えて見ると・・・・
カギかかってたよなぁ??

翌日今度は、よーーーく見てみようと天窓を棒で、もっと開けてみました。
畳は、ホコリがうっすらとかぶっていて、人が歩いた様子はない。
その部屋には、押し入れがありその襖(ふすま)に、まるで赤黒い墨を筆でパッと
はらったようなシミが・・・・・・

いったいあれは何?

空気は、重たくどんよりと・・・

一体ここは、何があった部屋なのか・・・??

声は、その後もしばらく続きました。
私は、3ヶ月ほどでそこを出ましたけど、毎日、毎日 霊現象で・・・
ポルターガスト、バリバリ・・・

101号室の事は、何もわかりませんでしたが、後で昼間来てた5〜6人が
神仏だった事がわかりました。

101号室の横に電柱があるのですが、106号室の男の先輩がその電柱に、
車で突っ込み死んでしまいました。
同乗者3人も含め4人が即死。

104号室の女の先輩が行方不明。


久しぶりにそのアパートに行ってみましたが、もうなくなってました・・・・・


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